僕らはみんな生きている
私は今年になってからサイエンスワールドという体験型科学館で
子どもに科学工作を教えるインストラクターをしています。
専門知識はないのですが、
来館した親子に工作を通して科学に関心をもってもらうよう
作品を見せあり、パフォーマンスしたり、一緒に遊んだりして
「こんなふうにおもしろいことができるよ」とか「不思議だね」ということを伝え、
興味をもってもらうことが中心です。
基本的には作り方を見ながら自分たちでつくってもらうので、
私は、迷った時にアドバイスしたり、失敗しないようお手伝いしたりする程度です。
でも、ほんとにいろいろな親子がいます。
私が案内したことを親御さんが面白がってくれると、
「なんやこれ?」と思っている子が、関心をもちだしたり、
親が他のイベントに早く行こうとしていても、
子どもに「おもしろそー、やるー」と言われ思い通りにいかず仕方なく始める親子もいます。
親ごさんも、
子どもと一緒に話しながら作る人もいれば、
全部作ってしまう人もいますし、
全く知らん顔でスマホを見ている人ももいます。
そんな姿を見ながら自分たち親子はどんなだったかなと、思いめぐらします。
楽しい思い出ににっこりしたり、「でもな」と思うことに少しがっかりして、
私自身の内省の時間にもなっています。
また、そこで話しかけてくれる親子との会話もいろいろあり、
楽しく笑いあったり、お役にたてるような場面もあったり、
お節介しちゃったなというときもありで、いろいろな思いをもちながら過ごしています。
今月はタランチュラやへび、毒カエル、ゴキブリなどの観察ができるコーナーの担当でした。
テーマは「僕らはみんな生きている」です。
いわゆる嫌われ者の生き物ですが、
でも「嫌っていないで、よく見てね。この子たちも生きているよ」
という実感を持ってもらいたいという意図のコーナーです。
ある保護者が(お孫さんを連れたおばあさん)、「なんのために生きとるんだろね」とつぶやかれ、
思わず「なんのため」というところを反復してしまいました。
そしたら「だって、毒をもってるし、生きてる意味あるの?」と言われました。
私は「はあ」とだけ返事をし、余計なことは言いませんでしたが、
「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」
というレヴィ・ストロースの言葉が頭をよぎりました。
意味や役立つことの価値は大切だけど、ただそこにいるだけでもいいような気もするなと、
そのことは私は大切だなと思ったし、
このコーナーを作ったスタッフの思いにも気づけたような気がしました。
もともと私は、科学とは無縁で、ほとんど関心がないけれど、
「教育」という私の関心領域との共通があるという思いでこの仕事を始めました。
おかげで、私の世界が広がる喜びが味わえています。