家庭の味

老親の生活支援を中心とする毎日を送るようになって半年余り、
その間、父は肺炎を発症し、母は急な血圧低下で意識がなくなり
救急搬送されることもあった。
でも、幸い運よく近くに誰かがいて、すぐに対応できて、ひどい状態にならずに済んで、ほっとしている。
ただ、二人の体調や食事量などは、やはり気にかかる毎日である。
父母を連れて歯医者、病院などに通うついでに、一緒に買い物をすることも多い。
母はもう昔のように、手順の多い繊細な味付けの料理は作れなくなっている。
だが、父はそれが懐かしくて、食べたくて、その食材を買おうとする。
例えば、鳥レバーの甘辛煮などがそうだ。
また、朝は母が目玉焼きを作っているが、父は卵焼きが食べたいと内心思っていたようで、
それを先日ぼそりと私に言った。
この卵焼きは私が子供のころからの定番で、遠足や運動会、高校のお弁当には
よく入っていたもので、ときどき、朝ごはんにもお弁当に詰め終えた残りを食べることが
多かった。きっとそれぞれのうちの味があるのだろうが、うちの味は、卵に三温糖少々
これだけのシンプルなもので、中を半熟に仕上げるのがコツ。
ほんのり甘い味が、お弁当のときに楽しみだったのを、覚えている。
今日はあいにくの雨だが、今週のはじめは桜も満開だったので、ほんとうに久しぶりに
おにぎりを握って、お弁当を作って父母を連れ、近くの県立公園にお花見に出かけた。
平日だったが、大きな池ではボートを漕ぐ家族もちらほらあって、うららかな日差しの中、池のほとりに
ぐるりと植えられた桜の木は花も満開で見ごろだった。
また、鮮やかなピンクの山つつじの花も綺麗に咲いていて、桜の薄ピンクとの対比が美しいと
母も喜んでいた。
父はおにぎりを頬張りながら「外で食べるとうまいなぁ」と、いつもより食欲旺盛に食べてくれた。
もちろん、父が食べたがっていた卵焼きも。
子供のころ、家で食べた味は、不思議と忘れていないもの。
結婚してからは我が家の味にもなっている。
煮ものの多くがそうだし、卵焼きなどもそうだ。
父のイメージする味を、今は私しか再現できないのかなと思うと、
できるだけ、作って食べさせてあげたい気がする。
料理屋さんで、親族そろって会食することも年に何度かはあるし、プロの味はおいしいが、
やはり年をとると家庭の味が懐かしく、食べたくなるようだ。
無理のない範囲で、また近いうちに、鳥のレバーを煮て持っていこうと思う。
 


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