ありがとう!

  夏本番を告げるかのように、今朝から家の庭でセミが鳴きだした。今朝はまだ一匹だけど、これからセミの合唱が続き、暑い暑い夏が始まるかと思うと、それだけでどっと疲れてしまう。
でも、夏になるといつも思い出す心がホッとする思い出がある。

それは、まだ子供たちが幼稚園だったから、もう15年以上前のこと。私はそのころ軽自動車に乗っていた。その少し前からエンジンの調子が悪く、エンストをおこすことがあるようになったので、知り合いの自動車修理工場に行くことにした。真夏だったため、子供たちは実家の母に預けていった。
ところが、修理工場まであと少しで着くという交差点の右折ラインで、なんとエンストを起こしてしまった!私はめちゃくちゃに焦った!落ち着いて落ち着いてと言いながら、一生懸命鍵を回し、エンジンをかけてみた。でも、うんともすんとも言ってくれない後続の車は怒ってクラクションを鳴らすし、私の車をかぶせるようにして抜かしていく市バスまでがかぶせて抜かしていくクーラーはついてないし、焦るしで私は汗が滝のように流れ始めた。そして、私はとうとう車の中で泣き出してしまった
するとその時、助手席の窓をトントンとノックする人がいた。見ると、東南アジア系の男性が微笑んでいる。そして、「落ち着いて、落ち着いて。僕が運転を代わってあげるから」と言ってくれたのだ。私は彼が神様に見えた。そして、私は助手席に移り、彼が運転席に座り、ゆっくりと鍵を回した。何回かしたところ、やっとエンジンはかかってくれて、彼の運転で無事修理工場にたどり着くことができた
助手席で涙ぐんでる私に彼は優しく「大丈夫、大丈夫。心配ないね。」と声をかけながら運転してくれた。「僕にもあなたと同じくらいの奥さんいます。だから、心配になって声掛けました」とも言ってくれた。「あなたはどこから現れたの?」と尋ねると、私の横のラインで信号待ちをしていて、ハザードランプをつけて泣いている私に気づき、彼の車の助手席の友人に運転を任せて、降りてきてくれたそうだ。車はその辺で待たせてあるから大丈夫だという。
そして、彼は私が修理工場でバタバタしている間にそっと去って行ってしまった。もちろん、「ありがとう」となんども言ったけれど、せめて名前ぐらい聞いておけばよかったと今でも悔やまれる。
それにしても、「日本人は冷たい!!」とその時私は思った。助けるどころか、クラクションをならし、追い抜き、睨み付け、私をますます恐怖に追い込んだのだ。それまで、なんとなく外人に対して苦手意識を持っていたけれど、こんなに優しい親切な外人さんもいるんだなと感激した。
あれから、十数年たったけれど、あの交差点を通るとき、そして、暑い夏を迎えると思い出す心がホッとする出来事である。
「名前もどこの国の方かもわからない、外人さん。本当にあの時はありがとうございました」

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