人懐っこさ

  昨日、70代後半の母が、道路でつまずいて転んだ。かすり傷をあちこちに作ったが、骨折したわけではなくやれやれであった。しかし、夜になって足先がいたいと言い出し、病院に駆け込んだ。結果、幸いにも打撲で、湿布をすればよいようだった。
 わたしたちは、病院が閉まる直前に駆け込んだのだが、ちょうど同じように足を引きずる年配の女性が、駆け込み診察に来た。まるで二人が申し合わせたように足を引きずっていた。母とその人は、顔を見合わせて「どうしたの?」とたずねあい、お互いに転んだことを披露しあって笑い合っていた。そのうえ、二人とも昔、複雑骨折をしたことがあり、ドキドキして病院に来たという点も一緒だった。まさに奇遇である。その人も単なるねんざだったようである。
 帰りの車は、たいしたことなく済んだので、行きの車の暗い雰囲気から一変、ほっとできたし、わたしもよく転ぶので、知っている人に言うと「さすが親子」といわれそうだと話しながら笑顔になった。病院で出会った人と母は、同病相哀れむみたいなことをしながら、不安な気持ちを話して笑い話に変えていた。それも気持ちの立て直しにつながったかもしれないと思う。
 母が、知らない人に「どうしたの?」とか、にっこり笑って声をかける姿を時々見るが、わたしにはなかなかできない。昔は「ようやるわ」と否定的に見ていたが、このごろは、人懐っこさが羨ましいと思う。そしてそれを見るにつけ、自己開示や友達作りに悩む若い人が多い中、年配者の人への恐れのなさを分けられたらなと思う。ここに至るには、歳月が必要か、あるいはある種の世代の特性か、よくわからないけど、人生を楽しくする大事なコツだなと思う。わたしも会得できるであろうか。


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