街角の童話(めるへん)

昨日は、七夕。織姫と彦星が年に1度、天の川を渡って出会う夜。笹の葉の枝に、願い事を書いた短冊を結んで、空の上に思いを馳せる。

去年のこの日は次男が入籍をしてささやかにお祝いをしたので、七夕は我が家には特別な日でもあるが、今年は二人だけでお祝いをしたようだ。

昨日は、今年で4回目になる「街角の童話(めるへん)」というリーディングドラマ、朗読劇 を見に行った。個性豊かな3人の脚本家のオリジナル作品を、名古屋の劇団の俳優陣が演じ手となり、小劇場で上演される。

その脚本家の一人が、私の小学校時代の同級生というご縁で、毎年夫婦で観劇に行くのが、この時期の楽しみなイベントになっている。

彼女は、小6の頃から、小説家志望だった。読書ノートも誰よりもたくさんの作品を読んで書いていたし、面白い本を、何冊か紹介してもらった記憶もある。小学校卒業後、私は離れた町に引っ越しをしたのだけれど、彼女とは、ずっと文通を続けていて、年に1度くらいは、お互いに会ったりしていた。だから、別々の中学、高校に進んでも、お互いのことは何かの節目ごとに、報告しあっていた。お互いの結婚式にも出て、出産、育児の期間も、年賀状ではやり取りをしていた仲であった。子どもがまだ小さいころ、在宅でできる仕事をしようと、ある企業の採用試験を受けに出かけたとき、100人以上の応募者の中に、なんと、彼女を見かけた。びっくりして、声を掛け合い、めでたく、お互いに採用となり、それから15年ほど、私たちは、同じ会社の仕事をした仲でもある。今でも、顔を合わせるとちょっとした会話を交わすだけなのだが、近くに感じる。

だが、初心貫徹の彼女は、物書きになることを、ずっと続けていた。脚本教室に通い、先生についてずっと作品を書き続けて、全国のラジオドラマの脚本賞を、たくさん受賞している。NHKラジオでオンエアされた作品も数多くある。さりげない日常を描きながら、笑わせたり、驚かせたり、そして、心にしみるセリフで泣かせたり。今回の彼女の作品も、そんな起承転結で言えば、転がびっくりの展開で、結が思いがけない感動をこころに響かせるような作品だった。

暗い舞台に、演者にスポットライトがあたり、声が響き、豊かな表情が物語を紡いでいく。普通の演劇と違うのは、演者が舞台上ではあまり動かない。あくまで、脚本を豊かに朗読しているような、そんな台詞回しで展開する。必要な照明しかないので、効果音と演者の声音が、ストーリーに見るものの気持ちを、引き込んでいく。100人足らずの座席だけに舞台からも近いことも、集中できる演出のひとつとなるのだろう。

くしくも、今回の「街角の童話」の三つの作品は、大切な人との別れ、死別をモチーフにした作品だったが、どれもこころ温まるエンディングだった。七夕の宵に、ふさわしいなとふと、思った。

2時間半のいい時間を味わった。

「また、来年、楽しみにしているよ。」と、出口で待っていてくれた友人に声をかけた。