一隅を照らす

先週末に比叡山延暦寺を訪れた。
紅葉が始まっており、色彩のグラデーションに満足した。
もちろん根本中道をはじめとする、国宝の建物の荘厳な雰囲気にも感嘆した。
国宝と言えば比叡山の開祖、伝教大師・最澄の「一隅を照らす」という有名な言葉がある。
これは著書の「山家学生式」の一説に由来する。
「経寸十枚これ国宝に非ず、一隅を照らすこれ則ち国宝なり。」という一説である。
金銀財宝が国の宝ではなく、自分自身が置かれた場所で精一杯努力して、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも変えがたい貴い国の宝であるという意味だ。
実はこの言葉は、私にとって長い間身近な言葉として存在している。
私がこの言葉に出会ったのは、短期大学時代に恩師から聞いた時だった。
自分の与えられた場で自分らしく生きることが周りの人に影響を与え、その影響を受けた人がまた自分の周囲に影響を与えていく。それこそが社会を変えていくことになるのだと教えられた。
あなたが「社会の変革者になれ」と言われて育てられた。
ある意味、この言葉が今の私をつくってくれたと言ってもいいものだ。
ずっと経ってから、これが最澄の言葉だと知った。
今回、実際に最澄が書かれたという国宝の書簡を拝見した。
本当に丁寧に書かれた美しい文字を見て、最澄大師の一つひとつを大切にする姿に触れたような気がした。
生きる姿勢を見たような気がしたのである。
きっとこの言葉を実践し続けられたのであろう。
もちろん凡人の私が最澄大師の言葉を論じられるわけでもないが、改めて私は私のできることを私に与えられた場所でやっていこうと思った次第である。
比叡山延暦寺、一度行ってみてください。

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