7月の例会

7月18日(土)Seedsの例会を4ヶ月ぶりに開催しました。
コロナ禍の状況は、ここに来てまた感染者数が増え続けています。心配はつきませんが、マスク着用で行いました。
3月スタート予定だった新しい文献「ネガティブ・ケイパビリティー 答えの出ない事態に耐える力」 帚木蓬生 Hosei Hahakigi 著 を今月から取り上げます。

今回は、「はじめに」「1章」を、レジュメを参照にしながら、読み進めました。
著書自身の名前も珍しい印象ですが、「ネガティブ・ケイパビリティー」という言葉も、私自身初めて聞く横文字です。

ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力もしくは陰性の能力)
=どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える力 とあります。

序章では、臨床40年の精神科医である著者が、精神科医5,6年目の頃に出会った「共感に向けて。不思議さの活用」という表題の論文に「ネガティブ・ケイパビリティ」の記述を見つけたそうです。
詩人キーツの言葉に、シェークスピアが「ネガティブ・ケイパビリティ」を有していたこと。問題を解決する能力よりも、そういうことをしない能力が推奨されていること、不確かさの中で、事態や情況を持ちこたえ、不思議さや疑いの中にいる能力こそが、対象の本質に深く迫る方法であること。相手が人間なら、相手を本当に思いやる共感に至る手立てであるという結論。

「わかった」つもりの理解が、ごく低い次元にとどまってしまい、より高い次元まで発展しない。その理解が誤っていれば、悲劇はさらに深刻になってしまいます。
現代に生きる私たちも、いつも念頭に置いて必死で求めているのは、ポジティブケイパビリティです。この考え方だと、えてして表層の「問題」のみを捉えて、真相にある本当の問題に気づかず取り逃がしてしまうかもしれません。問題の解決方法がない状況に立ち至ると逃げ出したり、近づきたくはないものです。
人生や社会はどうにも変えられない、とりつくすべもない事柄に満ちているとも言えます。だからこそ、この答えの出ない事態に耐える力、能力が重要になってくるのだと。著者自身はこの能力を知って以来、生きるすべ、精神科医としての職業、作家としての創作行為が随分楽になり、乗り越えていく力、ふんばる力がついたそうです。

1章では、詩人キーツの25年という短い人生の中で、どうやってネガティブ・ケイパビリティを発見したのかが語られています。医学と文学の道を歩みながら経済的な困難の中、詩作の苦しみからキーツが導き出した受け身的能力」という概念。
キーツが手本としたシエークスピアの無感覚の感覚(the feel of not feel) など・・・。
この「感じないことを感じる」ことや、「受容的能力」の概念は、1817年に弟たちに宛てた手紙に登場する「ネガティブ・ケイパビリティ」の概念に結実されています。詩人キーツの発見したこの概念が、どのようにして次の世代へと導かれ、注目されていくのか・・・。
今後の章に、乞うご期待ください!

議事関係では、コロナ禍の状況もあり今後の例会のあり方や、文献の進め方について話し合いました。月1回開催していた例会は、当面3ヶ月ごとに開催する事とし、文献は数章まとめて取り上げることにしました。8月25日開催予定の「実家に帰ったみたいに・・・」は、今般の事情から中止を決めました。
次回例会は、10月を予定しています。

梅雨明けはもう少し先でしょうか。皆様くれぐれも気をつけてお過ごしください。